盗まれた記憶

2004年3月11日
今週アタマくらいから。
白髪の老人の面影に悩まされる俺…。

怪談ではありません。実在の人物です。たぶん…。
歯を磨く。顔を洗う。飯食う。仕事する。風呂入る。テレビ見る。
こんな何気ない日常生活のふとした瞬間に。何度も何度も。
ひらりと擦り寄ってくるその老人。
俺人生に関わってきた人なんですよ、たぶん。
たぶん、と自信なさげなのは、それすら確かではなくなってきてるから。
顔やその喋り口調、それらがすっと脳裏を掠める。
なのにそれがいったい誰だったのか、俺人生のどの点において関わった人なのか全然思い出せなくて。
喉まで出かかってる…最初のうちはそうだったのに。
思い出そうとすればするほど、その姿がぼやけてくるのです。
まるで記憶が盗まれたように。
今もおぼろげにぼんやりと老人の顔が浮かびます。
なのに誰なのか思い出せない…。
気味が悪い。気になってるからか、すごく頻繁にそのおぼろげなビジョンが浮かぶんです。
過去を最近のものから遡ってみる。
一つ前の職場。違う。
新しく始めた趣味の場。そこにもいない。
学生時代? それほど前のことではない。
誰やろ、アンタダレ?
なんだか、ある一定の記憶がすっぽり抜け落ちてる感じ。
宇宙人にさらわれて、その間の記憶がないような感じ。
単なる老化現象でしょうか。いや、それも困るけど(苦笑)。
彼がなにがしかのメッセージを送ってきよったような気がしてならない。
俺人生においてそれほど重要なポジションの人物ではないのだから。
覚えてなくてもいいくらいの、希薄な人間関係。
なのに、こうして、何度も何度も現れてはその姿を少しずつ薄くしていく。
これが「痴呆」の始まりなんでしょうか…。

母方の祖母が亡くなって何年になるのか。
痴呆の始まっていた祖母はお見舞いに行った私の顔をしげしげと見て「どちらさんですか?」と言ったのです。
涙が止まりませんでした。
あれほど可愛がってくれてたのに。
一緒に暮してはいなかったのでたまにしか会いませんでしたが。
元気だったときは、二ヶ月に一度ほどでしたがうちに泊まりに来ていて。
子供だった私は、それほど孝行するわけでもなかったので、急に他人行儀に見つめる視線にすごく後悔しました。

『私が優しくしてあげなかったから忘れちゃったんだ、きっと』
祖母がたまには思い出して欲しくて、あの老人に姿を変えて私の脳波に現れたのかもしれません。
今日の日記、最初はおもしろバナシになるはずだったのに。
こうしてちょっとしめっぽい風になってしまったのも、祖母の思いがそうさせたのかもしれない。
そして私は。
どうしても老人を思い出したいと思っています。
思い出してあげないといけないような気がする。
ダレだったのか。いつ出会ったのか。
諦めずに、薄れていく姿をつかまえよう。

思い出したらまた、報告します。

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